2009年12月9日水曜日

知財高裁 平成 21年 (行ケ) 10012号 審決取消請求事件

進歩性の判断に関して、同一の技術分野における同様の課題を解決するものであるから、引用発明の組み合わせに想到することが容易とした事例です。

『また,原告は,前記第3の4(1) のとおり,引用例2に記載された発明は,バックロックタイプとは動作及び作用が全く異なるフロントロックタイプのコネクタであり,バックロックタイプの引用発明にフロントロックタイプの引用例2の技術的事項を適用することは当業者が容易に想到し得たものではないとも主張する。
 しかしながら,まず,上記(2) で認定したとおり,引用発明及び引用例2に記載された発明はいずれもコンタクトを有するコネクタという同一の技術分野に属する発明であるところ,前記1(1) の記載から明らかなとおり,本願補正発明は,「フロントロックタイプのコネクタ」の低背位化という課題を解決するために,「バックロックタイプのコネクタ」を採用したものであり,押受部の先端に突出部を設け,スライダーには突出部と係合する係止孔を別個独立に設けることによって,低背位化と同時にスライダーの中央部の膨れを防止することができる発明である。また,前記1(2) の記載から明らかなとおり,引用発明は,「フロントロックタイプのコネクタ」の高さを低くし小型化するという課題を解決するために,「バックロックタイプのコネクタ」を採用したものである。一方,前記(1) の記載から明らかなとおり,引用例2に記載された発明は,「フロントロックタイプのコネクタ」の低背位化を達成するという課題を解決するために,「フロントロックタイプ」のコネクタにおいて,押受部の先端に突出部を設け,突出部と係合する係止孔を別個独立に設けることについての発明であり,引用例2に記載された発明では,そのようにすることによって,本願補正発明や引用発明と共通する課題である低背位化とともに蓋部材7の撓みを防止するものである。
 このように,「フロントロックタイプのコネクタ」と「バックロックタイプのコネクタ」とは,コンタクトを有するコネクタという同一の技術分野における,同様の課題解決手段の選択の相違にすぎないというべきであるから,バックロックタイプの引用発明にフロントロックタイプの引用例2に記載された技術的事項を適用することに阻害要因はないというべきである。したがって,「フロントロックタイプのコネクタ」と「バックロックタイプのコネクタ」の相違を過大視して,当業者が容易に想到し得たものではないとの原告の主張は採用することができない。』
判決言渡日:2009年10月21日

(H.O)

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