2009年4月30日木曜日

進歩性の判断

所長Hをはじめとする創英の弁理士が代理した審決取消請求事件で、拒絶審決を覆すことができた判決が、平成21年1月28日に知財高裁で出されました(平成20年(行ケ)第10096号)。その中で、進歩性の判断について少し踏み込んだ判断が示されています。
ほんやら日記でも少し前に紹介してましたし、最近、記事として取り上げていただいているブログもあるようです。

以下に判決文の一部を引用します。

『2 判断
(1) 特許法29条2項が定める要件の充足性,すなわち,当業者が,先行技術に基づいて出願に係る発明を容易に想到することができたか否かは,先行技術から出発して,出願に係る発明の先行技術に対する特徴点(先行技術と相違する構成)に到達することが容易であったか否かを基準として判断される。ところで,出願に係る発明の特徴点(先行技術と相違する構成)は,当該発明が目的とした課題を解決するためのものであるから,容易想到性の有無を客観的に判断するためには,当該発明の特徴点を的確に把握すること,すなわち,当該発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠である。

そして,容易想到性の判断の過程においては,事後分析的かつ非論理的思考は排除されなければならないが,そのためには,当該発明が目的とする「課題」の把握に当たって,その中に無意識的に「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込むことがないよう留意することが必要となる。

さらに,当該発明が容易想到であると判断するためには,先行技術の内容の検討に当たっても,当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であるというべきであるのは当然である。』

現行の審査基準からすると、進歩性否定の論理付けのハードルを上げる方向と言えるかと思います。
出願時の「課題」の書き方や、拒絶理由でよくみられる「記載してあるんだから組み合わせ容易」みたいな認定に対する反論の際に、参考になりそうです。
進歩性判断の流れが、また少し変わってくるかもしれませんね。

ちなみに、本判決事例は、創英所員の勉強会の題材として使われています。京都オフィスでも、事件を代理した元審判官本人に出張してきていただいて、勉強会をしましたよ。

(H.O)

2009年4月28日火曜日

発明って?

言うまでもなく、特許法は発明を保護するものです。
でも、そもそも「発明」って何でしょうか。

特許法第2条には、
「この法律で、「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」
と定義されています。
「技術的思想の創作」ですか・・・難しい言葉ですね。
思想の創作といわれても、なかなか具体的にピンときませんね。

そういう得体の知れないものを表現するために、弁理士などの特許事務所の人間は、日々知恵を絞っています。なんせ、特許請求の範囲の各請求項(クレーム)には、「特許を受けようとする発明を特定するために必要とする事項のすべて」(特許法第36条第5項)を記載しないといけないわけですから。

請求項において、「発明」は「言葉」で表現されます。
言語学では、「言葉」で表現されてはじめて「思想」が存在するという考え方があるようです。
「言葉」がないところに「思想」は存在しないと。
言い換えると、請求項が言葉で書かれる前は、発明がまだ成立していない、とも言えるかもしれません。
実際、この発明、請求項を書いた私も発明者に入れてよって言いたくなる場面もあります。
弁理士の仕事は、多分一般の人が想像している以上に、クリエイティブな仕事だと思います。

(H.O)

2009年4月27日月曜日

SION

日々たくさんのアーティストが出てきていて、iTunesをチェックしていると、自分の好みにあう新しいアーティストに出会うことがあります。これも結構楽しいものです。

一方で、長く聴き続けているアーティストがいます。
SION(シオン)というおじさんがいて、もう20年以上は聴いているわけですが、考えてみると、僕がこんなに長く、しつこく聴き続けているアーティストは他にいないかもしれません。
ずっと前に、「ありがてぇ」って曲がCMに使われていたことがあるので、もしかしたらご存じの人もいますかね。

曲の感じはオジサンロックです。Tom Waitsの影響を受けているらしく、実際似た感じもあります。

僕がSIONを聴いてしまうのは、人生、世の中に対する挫折感と、楽観主義と、そのあたりを含めた立ち位置に共感を覚えるからかもしれません。
そして、なぜか心に残る歌詞を書きます。たくさんあるんだけど、たとえば・・・

「グラスの中にきれいさっぱり消えてく氷に あこがれたりする
 いったい何をはっきりさせようとしたんだい 手のひらは言い
 秒針にはりついたって俺とは踊れないよ 時計は言う」
 ~夜しか泳げない~

「金のためには俺は動かない
 言ったあいつは 大金持ちだった
 時間を無駄にするな 好きなことだけやれ
 言ったあいつは 働かなくても食えた」
 ~二番目の夢で食ってる~

「彼女はかわいくて だから好きだ
 彼女もかかえてる 一人分の夜を」
 ~砂の城~

「幸せは一人では歩かない。いつも不幸せとつるんで歩いてる
 だからこのどん底の横には、喜びの朝だっているだろ」
 ~マイナスを脱ぎ捨てる~

「あとここで俺は たかが何十年か生きて
 あぁ うれしいだの、つらいだの繰り返すのか」
 ~風来坊~ 

「一年に一度 こうやってね、お袋がもう年だから 顔を見に帰るんだよ
 でもなんか俺はもう家に泊まりづらくてね
 帰ったらいつも、ビジネスホテル、ビジネスホテル」
 ~30年~

全部SIONの作詞です。こんな感じの歌詞で、何か心にひっかかりを感じた人は、是非聴いてみてください。

(H.O)

2009年4月23日木曜日

京都ゆかりのアーティスト

京都もそれなりに音楽が盛んな街だと思います。

京都ゆかりのアーティストで、最近のメジャーどころといえば、くるりくらいでしょうか。

今年に入って、主に京都で活動しているAudio Safariというバンドを知りました。河原町のタワーレコードで「東洋のシガー・ロス!」とかいって宣伝されていたのに魅かれて、ウルノソラというアルバムを買ってみたのですが、これがなかなか、よかったですよ。
フワフワ感のある不思議系の曲調です。確かに、シガー・ロスみたいなのが好みの人なら、きっと気に入るでしょう。

(H.O)

2009年4月22日水曜日

試験まで1ヶ月

弁理士の第1関門、短答式筆記試験まで、あと約1ヶ月となりましたね。
京都オフィスの受験生も、本格的に勉強している感じ?でしょうか。

僕の感覚では、これからの1ヶ月で勝負はほぼ決まります!
1ヶ月本当に集中すれば、短答式を合格するだけの知識を身に付けることができます。
そして、その後論文用の知識をプラスして、論文の書き方の要領をつかめば、論文試験も突破です!
そう簡単にいかないよって思うかもしれないですが、信じる者は救われます。

普段、特許明細書を書く仕事をしている人は、少し有利かもしれませんね。
明細書を書き慣れていると、論文を書くこと自体への抵抗は少ないので。
だから知識さえ詰め込めば、意外と何とかなるものなのです。
ともかく、もうこれ以上できないってくらいの気合いと集中力でのぞむことが大事です。

(H.O)

2009年4月20日月曜日

京都ブランド

「京都ブランド商標推進協議会」が、京都の地場産品を認証する地域ブランド制度を紹介するインターネットサイトを開設したようです。

「京都」は、歴史の長い伝統工芸や、京野菜などもあって、ブランド力の強い地域です。
特許庁の発表によれば、地域団体商標制度による登録査定の都道府県別の件数は、京都府が圧倒的に1位だそうです。

私たち創英の京都オフィスも、商標に限らず、何らかの形で京都ブランドを守る力になりたいものです。

(H.O)

2009年4月19日日曜日

音楽で癒しを

普段よく、イヤホンで音楽を聴きながら仕事をしています。

僕は音楽が好きな人なので、音楽を聴きながらできる仕事だというだけでも、いい仕事だなあと思ったりします。

聴く音楽は雑多で、ほんとにいろいろなのですが、心の行き詰まりを強く感じたときは、RadioheadのKidAがおススメです。1曲目のEverything In Its Right Placeなんかを大音量で聴いていると、心から湧いてくる闇を放り込んでいけるようで、ちょっとしたカタルシスを感じます。音自体は機械的な感じですが、僕にとっては、いわゆるヒーリング系の音楽よりも逆に癒される曲ですね。

(H.O)

2009年4月14日火曜日

完璧なクレーム

特許明細書を書くことを生業とする者にとって、いいクレームを書くことは非常に重要です。
でも、どんなクレームがいいクレームなの?という問いに答えるのは本当に難しい。
いやぁ、ケースバイケースですよ・・・とごまかすしかなくなる。

例えば、広いクレームが本当にいいクレームなのでしょうか。
クレームの範囲を広くすれば、独占的に実施できる範囲が広くなるから、そりゃいいでしょう、と一般的には言えるかもしれません。
でも、クレームを広くすることは手段であって、目的ではありません。
何のために特許出願するのか、という目的をよくよく考えてみれば、実は一見狭いクレームがいいクレームだという場合もあり得るのではないでしょうか。

要は特許出願の目的次第ということです。ただし、目的も一つではなかったりするからややこしい。
さらに、仮に目的がはっきりしていたとしても、そのための最適なクレームを考えることは、やっぱり難しい。

ということで、完璧なクレームなどといったものは存在しないのです!
完璧な絶望が存在しないように。

そういえば、この作家も京都市出身ですね。

(H.O)

2009年4月10日金曜日

NHKも取り上げた

企業、特許事務所などで知財に関わっている人たちの間では、日本における特許制度の今の運用状況には少し問題があるのでは?という認識を持たれている方も多いのではないのでしょうか。

最近、この問題がNHKでも取り上げられましたね。

金融バブルが崩壊した今こそ、モノづくりを得意とする日本のチャンスです。
このチャンスを生かすためにも、きちんと発明をした人が相応に報われるように、
運用を考えていってもらいたいものです。

(H.O)

2009年4月6日月曜日

いつの時代も

今は大変な時代と言われます。一庶民にとってみれば、ニュースの断片的な情報に触れたところで、また、解説者のもっともらしいコメントを聞いたところで、一体何がどうなっているのやら、いっこうに要領を得ません。複雑な時代になったものです。

でも、もっとシンプルに考えて生きたらいいのかもしれません。金融バブルが崩壊しようと、日本の政治が迷走しようと、春になったら花が咲くのです。どんな時代でも、桜が墨染に咲くことはありません。

京都の桜の名所で、お客様と一緒に花見で盛り上がりました。






所長Hも元気です!