所長Hをはじめとする創英の弁理士が代理した審決取消請求事件で、拒絶審決を覆すことができた判決が、平成21年1月28日に知財高裁で出されました(平成20年(行ケ)第10096号)。その中で、進歩性の判断について少し踏み込んだ判断が示されています。
ほんやら日記でも少し前に紹介してましたし、最近、記事として取り上げていただいているブログもあるようです。
以下に判決文の一部を引用します。
『2 判断
(1) 特許法29条2項が定める要件の充足性,すなわち,当業者が,先行技術に基づいて出願に係る発明を容易に想到することができたか否かは,先行技術から出発して,出願に係る発明の先行技術に対する特徴点(先行技術と相違する構成)に到達することが容易であったか否かを基準として判断される。ところで,出願に係る発明の特徴点(先行技術と相違する構成)は,当該発明が目的とした課題を解決するためのものであるから,容易想到性の有無を客観的に判断するためには,当該発明の特徴点を的確に把握すること,すなわち,当該発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠である。
そして,容易想到性の判断の過程においては,事後分析的かつ非論理的思考は排除されなければならないが,そのためには,当該発明が目的とする「課題」の把握に当たって,その中に無意識的に「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込むことがないよう留意することが必要となる。
さらに,当該発明が容易想到であると判断するためには,先行技術の内容の検討に当たっても,当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であるというべきであるのは当然である。』
現行の審査基準からすると、進歩性否定の論理付けのハードルを上げる方向と言えるかと思います。
出願時の「課題」の書き方や、拒絶理由でよくみられる「記載してあるんだから組み合わせ容易」みたいな認定に対する反論の際に、参考になりそうです。
進歩性判断の流れが、また少し変わってくるかもしれませんね。
ちなみに、本判決事例は、創英所員の勉強会の題材として使われています。京都オフィスでも、事件を代理した元審判官本人に出張してきていただいて、勉強会をしましたよ。
(H.O)
2 件のコメント:
最近の知財高裁の判決は、これまで以上に動機や引用発明の認定を厳密にすることを要求しているように思います。
出願人側にはいい流れだと思うので、この流れを止めないようにしたいですね。
意見書では厳密な技術的議論を心掛け、間違っても形式的な言葉遊びは避けたいところです。
コメントありがとうございます。
審査官も忙しいのか、技術的な本質というよりは、形式的な議論で片づけてしまう傾向がありますからね。
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