2010年2月18日木曜日

知財高裁 平成 21年 (行ケ) 10064号 審決取消請求事件

数値限定はその技術的意義が認められないから設計事項であり、用途限定はその用途に格別な意義はないから容易想到であるとして、進歩性が否定された事例です。

『本願明細書の発明の詳細な説明には,乾燥工程についての記載が上記認定の部分以外にはないところ,上記記載からは,せいぜい「乾燥を行った後」で「篩い分けを行って粒径を調整」することや,「粒径が外れたものを再度スラリー化」して「収率を向上させる」こととの関連がうかがえるにすぎない。しかし,本願発明は,発明特定事項として,篩い分け工程や再度スラリー化する工程を有していないのであるから,粒径の調整や収率の向上といった課題の解決を図るためのものとか,上記目的を達成するためのものなどということはできない。しかも,本願明細書の上記記載からは,「80℃~150℃」という数値範囲の意義を理解することはできない。そうすると,本願明細書の記載自体からは,本願発明が「80℃~150℃で乾燥」する構成を有することの意義を,理解することができない。
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 そして,本願発明が乾燥温度を「80℃~150℃」と特定することに格別の意義を認められないのは上記のとおりであるから,当業者が引用発明1についてその乾燥温度を所望の温度すなわち80℃~150℃に設定することは単なる設計事項にすぎないといわざるを得ない。
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 原告は,引用例1と引用例2における,吸着目的,吸着対象及び吸着メカニズムの違いを主張して,両者の組合せに動機付けがないと主張する。
 しかしながら,引用発明1の製造方法によって得られる多孔性リン酸化合物粒子集合体はヒドロキシアパタイトを包含するところ,ヒドロキシアパタイトという物質が広い用途で適用できる汎用性を有するものであって,引用発明2等で示されるように,その用途を浄水器用吸着材とすることは当業者にとって格別困難なく想到し得るものである。
 そして、本願発明の用途に格別の意義はないから,引用発明1と引用発明2との間に原告が主張するような吸着目的等の違いがあるとしても,引用発明1の方法によって得られる製造物であるヒドロキシアパタイトの用途について着目するとき,そのような違いは,当業者が,同じ製造物の用途について開示する引用発明2の技術思想を採用することの阻害要因とはならない。
平成21年11月5日判決言渡

(H.O)

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